【後編】僕はただただ、彼女を抱きしめることしかできなかった
2024/09/16
前回の続き…
スナックのママから問われる。
「南陽にはいつまでいるの?」
なんて話になり、
「明日の最終で帰るんだ…」
というと
「じゃあ、私見送りに行くね。」
とひとこと。
あぁ飲み屋さんあるあるの口約束かな。
地方講演で飲み屋さんに行くと、
「えー!講演ですかー!すごいですねー!私も聞きに行きますー!!」
という定型句。
朝も早かったため、夜更かしはせずに
ほろ酔いちどり車椅子でホテルに戻る。
宿泊した丹泉ホテルさん
家族風呂の温泉が最高!
久々に足の先まで伸ばして気持ち良かったなー!
翌日は南陽観光スタート!
いきなりのメインイベント熊野大社へ。
ここは車で参拝場所の近くまで来ることができる。
砂利道だが…なんと!
熊野大社さんにはJINRIKIが常時2セット置いてあるらしくありがたくレンタル。
取り付け簡単♪
悪路もバッチリ!
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鐘を鳴らし・・
祈る・・祈ることはいつも同じ。
しっかりと神様にお祈りして、ふらりと御守売り場へ。
な、なんと!
ここは縁結びの神様らしいですよぉ。
同い年(31歳)の鳥越くんと一緒に食い気味で御守を選ぶ。
そしてうろうろと散歩していると、途中
『三羽の兎』の看板が。
進んで見てみると看板に歴史が綴ってある。
ほうほううさぎの彫刻を見つけよ・・と。
1羽見つけた!皆は見つけられたかな?
3羽見つけられなかった鳥ちゃん
気に入ったのはこちら。
「熊野大社はご縁結ばれるところ。
日本最古の本に記された神様の言葉、"あなにやし、えをとめを"(意味:あぁ、なんと素晴らしい女性だろう)
シンプルで飾り気のない素直な言葉。それはこの国で一番最初のプロポーズ。」
あなたの事を好きというでもなく、結婚してくださいというでもなく
ただただあなたは素晴らしいと言うその一言で愛を伝えるシンプルな表現が好きだなぁ。
なんだかすごくいい気分になった。
熊野大社、また来ようっと。
他にも田園さんという老舗のカフェで美味しい食事を頂いたり…
セットランチにAセットはない、あるのはBセットのみ
一番美味しかったチーズスパゲッティ
春は個室から烏帽子山公園の桜が綺麗に見えるようです。
また、結城豊太郎記念館で南陽市の歴史を学び…
館長さん直々の教え
過去を知り、未来を見つめる3人
どんな未来を見つめていることやら。。
はたまた夕鶴の里では鶴の恩返しの舞台になった南陽市の資料等を観覧できるだけではなく、お話を聞くこともできるとのことで立ち寄る。
雰囲気のある館内
機織りも体験できちゃうよ
真剣に話を聞く
真剣に・・
その地方の方言で語られる民話の数々はとてもユーモアに溢れていて、少しばかり瞳を閉じてその語りに耳を傾けたとな。
南陽の方言で、話の終わりに
「とーびんと」
をつけると"おしまい"という意味らしい。
語り手の口から放たれるその”とーびんと”のアクセントが田舎独特の響きでとっても可愛かった。
そして最後に赤湯駅近くの美味しい山形牛が食べられる焼肉屋さん
『治へい』さんに連れて行ってもらうことに!!
お店は段差がありますが、車椅子で入る旨伝えるとスロープをセットしてくれます!
芯たん(一番下)が今まで食べた焼肉の中で一番美味しかった…
焼肉屋では、一泊二日ではあったけれど本当に濃い時間を過ごしてそれぞれの思い出話に花が咲き…。
まさかの『B612』
最終電車の時間が近づき…。
ふ、と昨日のママのことを思い出し
「そういえば昨日の夜に行ったスナックで、ママが見送りに行くよ〜なんて言っててさー!水商売あるあるだよね〜」
「でももし本当に来てくれたとしたらやっぱり南陽市は日本一優しい街なんだと思う。」
なんて盛り上がり、お肉もたいらげ雨の中少しソワソワしながらママが待っているかもしれない赤湯駅へ足を進める。
駅はそんなに広くない。
駅に入ったら全景が見渡せるほどだ。
そして、駅に入る。
誰もいなかった。
あぁ、やっぱり居なかったよ。
しょうがない、そんなもんさ!
いい笑い話になったよ。
と、中に入って一息つこうとまた車椅子を前に進めたら、
隣のニューデイズ(駅によくあるコンビニ)のレジで買い物をしている女性の後ろ姿が一瞬目に映った。
あれ。。あの金髪は…
ママだった。
僕はママを見つけた瞬間に、ただただ抱きしめることしかできなかった。
ママー!!!!
動画のスクショなので画質粗めなのが惜しい・・
ママは早めに駅に着いていたらしく、僕に先程買ったであろうサンドイッチやミルクティー(残念ながら飲めない)を手渡してくれた。
そして、カバンの奥からさらにもう一つ何かをおもむろに取り出した。
ママ「はい、どうぞ」
その手にはサッポロポテトBBQあじ。
彼女は覚えていたんだ、僕が他のテーブルの分まで食べ尽くしてしまうほどにサッポロポテトBBQあじが好きだったと言うことを。
それが手渡された瞬間に、昨日バーに一緒に居て事情を知っていたその場の全員から歓声が。
やばい、泣きそう。
僕「でもどうして…?どうして来てくれたの…?」
ママ「だって昨日約束したじゃないの、見送りに行くって。」
この段階で号泣。
泣いた。
その隣にいた加藤さんも男泣き。
ありがとう。
加藤さんは
「どう?分かったかい、南陽が。」
僕は噛み締めながら
『これが(日本一優しい街)南陽だ』
と一言だけ笑顔で答えた。
そして電車が発車するまで今回お世話になった南陽の関係者の皆様とママに見送ってもらった。
東京までに向かう新幹線の車中で、頂いたサッポロポテトBBQあじと飲めないミルクティーを眺めながらママの事をずっと考えていた。
ガタンガタンと良く揺れる車体が、眠気を誘う。
最後にママの連絡先でも聞いておけば良かったかなぁ…
いや、いいや。
これも旅の出会いだから…
でもママに一言、もう一言でいいから何か伝えたかったなぁ。
そして一つの言葉を思い出した。
「あぁ、なんと素晴らしい女性だろう」
次は伝えてあげるんだ。
それはプロポーズとは違う、僕からママに向けたシンプルで飾り気のない愛と感謝のメッセージ。
とーびんと。